最近また、百日せきが流行っているみたい。
百日せきの概要について、厚生労働省ではこのように説明されている。
百日せきは百日咳菌によって発生します。名前のとおり激しい咳をともなう病気で、一歳以下の乳児、とくに生後6ヵ月以下の子どもでは亡くなってしまうこともあります。
感染すると、激しい咳が長く続く百日せき。ワクチンの免疫効果も数年~10年ほどで減衰するため、ワクチン接種歴のある人でも感染する可能性がある。
小さなお子さんが感染すると命の危険もある百日せきは、「子どもがかかる病気」「大人が感染しても大したことない」と思っている方、多いんじゃないかな。
大人になってから百日せきに感染し苦しんだ私としては、「大人も油断できない」と声を大にして言いたい。入院するほどではなかったけど、日常生活に支障をきたすレべルの症状に苦しんだから。
稀な例かもしれないけど、こんな例もあるということを知ってもらいたいです。
・最初は普通の風邪だと思っていた
2018年夏、どこからか風邪をもらってしまった。(と思っていた)
喉の痛みから始まり、徐々に咳が出てきたので近所の内科にかかった。診断は「ただの風邪ですね。無理せず体を休めてください」とのこと。
処方された総合感冒薬を服用しできる限り安静にしていたけれど、なぜか日増しに咳がひどくなり、次第に激しい咳に変わっていった。
お腹の底から湧き上がるような、えづくような咳で、咳をすると呼吸ができなくて苦しくなる。たまに、咳のしすぎて嘔吐してしまうこともあるほど。
一度咳き込むと止まらなくて、長いと5分~10分間激しい咳が続いたりするので、仕事の電話中に咳が出ると一旦切らざるを得ず、仕事もしづらかった。咳のしずぎで一時期ほとんど声が出なくなったこともあり、その時は本当に困ってしまった。
それまでに経験したことのないような激しい咳が続き、徐々に「これって本当に普通の風邪なのかな?」と疑問を抱くように......。
・どこの病院でも検査をしてもらえず
最初に診察を受けた病院には2回行ったがいずれも「風邪」の診断だった。2回目にも同じ総合感冒薬を処方され、しまいには「気の持ちよう」的なことを言われた。
処方された薬をきっちり服薬するも、咳はひどくなる一方。ネットで自分の症状を調べたところ百日せきに当てはまる症状が多かったので、別の内科にかかり、百日せきの症状に当てはまること・検査を希望する旨を伝えるも、「百日せきはあなたのような大人は重症化しないから、ただの気管支炎だろう」と言われ咳止めや去痰薬を処方された。
内科ではダメなのか、と思い耳鼻咽喉科にかかるも「気管支炎」との診断で咳止めを処方され「これでしばらく様子をみましょう」と言われた。
その後も症状は治まるどころか激しい咳症状が進行していき、咳をすると喉の奥から「ヒュー」と音がして喉の奥がキューっと閉まるような感覚に。毎回息苦しくなるので、咳をするたびに顔が青ざめていた。
特に朝晩に咳症状がひどく、夜中に何度も咳き込んで起きてしまうのでずっと寝不足の状態。
また、少しでも刺激のある食べ物や、喉にひっかかるような乾燥した食べ物、熱い飲み物を口にすると激しく咳き込んで止まらなくなるので、口にできるものも限られ思うような食事ができない。微熱もずっと続いていて、咳症状以外のしんどさも加わっていた。
結局3つの病院で診察を受けたけど、どこの病院でも検査はしてもらえず、このひたすらつらい症状の原因が何なのか、いつ良くなるのかも分からないまま、なんとか耐えながら2ヶ月近くの月日を過ごしたのだった。
幸いにもこの時の私は転職したてでほぼ在宅仕事、営業に出るときだけ外出するという仕事の仕方だったので、この間は外回りはせず家で仕事をしていた。
・咳症状の発症から2ヶ月、遅すぎる「百日せき」診断
咳が出始めてから2ヶ月ほど経ったころ、恐らく自然治癒なんだろうけれど、当初のような激しい咳症状は少しずつ治まっていった。
しかし、夏も終わり季節は秋に移る頃。乾燥した空気が喉の奥に入り込むと発作のような咳が出るし、朝晩は相変わらず呼吸ができなくなるほどの激しい咳が出るので、いい加減に困り果ててそれまでよりも大きな病院に行った。
何時間も待ってようやく入れた診察室で、これまでの経緯と辛い症状について必死で説明すると、血液検査をしてもらえることに。
検査の結果、「もう治りかけだけど、百日せきですね」と。遅すぎる診断だった。
原因が分からないまま長い間症状と向き合うことに不安と疲れを感じていたので、やっと原因が分かったという安堵感から、待合室に戻りながら私は目に涙を浮かべていた。
その後、気管支拡張剤や吸入薬等を処方され、発症からちょうど3ヶ月ほどで咳が治った。長い戦いだった。
・大人の百日せきは風邪や気管支炎と間違えられやすいので要注意
私がかかった病院では、最後に行った総合病院を除いて、百日せきを疑われず風邪や気管支炎という診断をされた。私自身も当時はネットで調べるまで殆ど知識がなかったし、特に大人の場合は百日せきの診断が難しいと言われているとは言え、当時は医師側の「百日せきは大人が感染しても普通の風邪程度で済むもの」という思い込みも少なからずあったのではないかと思う。
こうして風邪や気管支炎と間違えられた結果、適切な治療ができず、知らないうちに人に移してしまっていたかもしれない。
国立健康危機管理研究機構の 感染症情報提供サイトによると、生後6か月以上の百日せき患者にはマクロライド系抗菌薬を用いることができ、通常咳の開始から3週間ほど菌排出が続くが、これを服用すると、服用開始から5日程度で菌の分離がほぼ陰性になるとのこと。ちなみに、症状出現後3週間以内であればPCR検査での百日せきの診断が可能とのことです。
早期に適切な治療を受けることで、自身の症状緩和のみならず、他者への感染の可能性も抑えることができるのです。
※ただし、同サイトで4/22に公開された百日咳の発生状況によると「第一選択薬として用いられるマクロライド系抗菌薬に対する耐性株」の報告が昨年から日本国内でもみられているようなので、今後の発生状況により適切な治療法は変わるかもしれません。
百日せきは、小さなお子さんのほうが感染・重症化"しやすい"、大人がかかっても軽症で済み"やすい"のは間違いないけれど、そうでないケースもある。
また百日せきが猛威を振るっている今も、「百日せきは子どもを中心に感染する」「大人の百日せきは風邪と同程度の症状」といった説明をされているサイトを散見するけれど、大人でも感染し激しい咳症状が出る可能性があることを知ってもらうことで、私のように辛い症状に長く苦しむ人が一人でも減ってほしいと願う。そもそも、感染しないのが一番だけれど。